虫歯治療

むし歯ってなに?

むし歯は「蝕まれた歯」という意味で、以前は「虫歯」と表記されるのが一般的でしたが、最近では「むし歯」の方をよく見かけるようになってきました。なぜ「虫歯」の表記を見かけなくなってきたのか、その理由は子供達が「虫が歯を食べることでむし歯ができる」と誤解する恐れがあり、それを避けるためにJSPP(全国小児歯科開業医会)が日本学校保健会や日本学校歯科医会と協力して「むし歯」と表記をするよう、関係者に働きかけているからなのです。

確かにむし歯のイメージとして、むし歯のバイ菌が槍のようなものを持って歯をつついているような図をよく目にしますが、実はこのイメージは正しくなく、むし歯菌が直接歯を攻撃して穴が開いてむし歯ができるわけではないのです。むし歯というのはむし歯の原因菌が出す酸によって歯がだんだんと溶けて蝕まれていく状態のことなのです。

むし歯の原因は?

口の中には300〜700種類もの細菌が住んでいると言われています。その中には良い細菌もいれば悪い細菌もいます。むし歯の原因菌にはいくつか確認されていますが、最も代表的でよく知られているのはミュータンス菌と呼ばれているものです。ミュータンス菌は食べ物の中の糖分を栄養にして増殖して歯の上に歯垢(プラーク)と呼ばれる自分たちの住処を形成します。そしてこの歯垢の中で酸を作り出して、歯を徐々に溶かしていくのです。これがむし歯のできるメカニズムです。

ほとんどの人はミュータンス菌を常在菌としてお口の中に持っています。でも全ての人がむし歯になるわけではありません。つまり、むし歯はミュータンス菌がいるからといって必ずできるわけではなく、 糖分、歯垢(細菌の塊)、歯の質の3つの要素が絡み合い、時間の経過が重なって初めて発生するのです。

歯の再石灰化って?

歯の再石灰化とは?

歯の表面の歯垢(プラーク)内では細菌が酸を作り出します。その酸によって歯のカルシウムやリン酸などのミネラル成分が溶け出し、歯の結晶構造がスカスカな状態になります。この現象は「脱灰(だっかい)」と呼ばれ、この状態がひどくなると歯に穴が開き始めます。

その一方で、歯を修復する機構も働いています。唾液中のカルシウムやリン酸が脱灰されたスカスカの層に沈着し、歯を元の通りに健康な状態に戻そうとする働きです。これを歯の再石灰化と呼んでいます。お口の中ではこの「脱灰」と「再石灰化」が常に起こっていますが、唾液が不十分であったり、歯垢が付きっぱなしであったりすると、再石灰化がうまく行われず、脱灰が進み、むし歯になってしまいます。

再石灰化を促進するために歯科でできることは?

再石灰化は、日常的には、歯垢を歯磨きでこまめにしっかりと落とすこと、唾液を十分に出して歯の表面が唾液で潤うようにしておくこと、フッ素配合の歯磨き粉を使用することで促進されます。また、キシリトールのガムやタブレットを摂取することでも唾液の分泌が促されるため、再石灰化の効果が期待できます。

歯科医院では普段の歯磨きで取りきれない歯垢をクリーニングで取ってもらったり、高濃度のフッ素を塗布することで再石灰化の効果を高めることができます。しかし、家庭でいかに再石灰化が起こりやすくするような生活をしているかというのが一番大事だということを忘れないようにしましょう。

むし歯の進行段階と治療法

むし歯の進行段階その1:C0(シーオー)

C0(シーオー)

むし歯の初期の段階はCOはシーゼロではなく、シーオーと呼びます。OはObservation(観察)の頭文字であり、削って治療をせず、経過観察をして様子をみましょう、という段階です。エナメル質の表面が脱灰し始め、その部分が白や茶色っぽく変色しますが、穴は開いていません。

治療法
再石灰化で治る見込みが高いので、本格的なむし歯に発展させないように気をつけながら経過を見ていきます。

むし歯の進行段階その2:C1(シーワン)

C1(シーワン)

むし歯の脱灰が進行すると、エナメル質の表面に穴が開き始めます。痛みはほとんどないことが多く、たまに甘いものや冷たいもので一瞬しみることもあります。

治療法
穴が開き始めてしまうと自然治癒が望めなくなるため、進行をストップさせるために早めにむし歯を削って詰める必要があります。この場合、コンポジットレジンと呼ばれる歯科用のプラスチックを詰めます。麻酔はしなくてもそれほど痛まないことが多いです。

むし歯の進行段階その3:C2(シーツー)

C2(シーツー)

むし歯がエナメル質の下にある象牙質に達した状態です。主に冷たいものでしみるようになり、だんだんと温かいものもしみるようになってきますが、刺激をしなければ痛むことはありません。

治療法
むし歯を削ってコンポジットレジンか、むし歯の範囲が大きい場合には銀歯やセラミックの詰め物をします。むし歯が深いため、そのまま削ると痛みを伴うので通常は麻酔をして行います。

むし歯の進行段階その4:C3(シースリー)

C3(シースリー)

むし歯が象牙質からその奥にある歯髄に達した状態です。歯髄が炎症を起こすため、何もしなくてもズキズキと激痛が起こります。痛みの程度がひどいため、痛み止めが効かなくなることもよくあります。

治療法
炎症を起こした歯髄を麻酔下で取り除き、根の治療を行います。激痛は通常、神経を取れば落ち着きます。その後、完全に症状が取れたら根の中に固形の薬を詰め、詰め物または被せ物をします。

むし歯の進行段階その5:C4(シーフォー)

C4(シーフォー)

むし歯で歯のほとんどが崩壊し、歯根だけになってしまっている状態で、外から見ても歯があるのがわからない状態になっています。歯はむし歯で軟らかくなってしまっており、上に人工の歯を立てることはもはやできません。つまり、歯としての機能はもう果たすことができません。

治療法
麻酔をし、抜歯を行います。

歯医者さんで出来るむし歯の予防方法は?

むし歯はよっぽどの初期でない限り、一度できてしまうと、治療をしたとしても、その後詰め物の劣化とともにその脇からむし歯になる可能性は常に付きまといます。そのため、むし歯は「できてから治療」をするのではある意味遅い、とも言えます。つまり、一生むし歯で悩まされないようにするためには、むし歯を「予防」するのが最善の策なのです。

ところで、むし歯を予防するためには、「歯磨きを頑張ればいい」と思っている人が多いのではないでしょうか。しかし、歯磨きを頑張っていてもむし歯になる人は後を絶ちません。つまりこれはどういうことかというと、歯磨きの仕方自体に問題がある、食生活に問題がある、歯の質に問題がある、ということなどが原因として考えられます。

日本人は歯磨きをこまめにしているにもかかわらず、むし歯が多い民族です。この一つの原因として、歯医者さんに予防目的で通う人が非常に少ない、ということが挙げられます。むし歯を予防するためには、家庭で行うセルフケアの他に、歯科医院でのプロのケアを受けることが非常に大切なのです。それには具体的に次のような方法があります。

歯医者さんで受けられるむし歯の予防方法

歯のクリーニング
歯磨きで汚れを取りきることは不可能であり、その取り残した部分からむし歯が発生します。歯医者さんで隅々までクリーニングをすることで、そのリスクを大幅に下げることができます。
歯磨き指導
歯磨き方法が間違っていると、磨いていても磨けてない、ということが起こり、むし歯の発生原因となるため、プロによる正しい磨き方の指導を受け、自分で実践できるようにしておく必要があります。
食事指導
むし歯になりやすい食生活を送っている場合、歯磨きをしていてもむし歯になってしまいます。この場合、プロによる「むし歯になりにくい食事の仕方」の指導を受け、日常生活で実践することが大事です。
高濃度フッ素塗布
乳歯や生えかけの永久歯のような弱い歯は、特にむし歯リスクが高く、歯医者さんで高濃度のフッ素を塗布してもらい、歯を強化しておくことをお勧めします。

むし歯に関して気をつけること

世間では「甘いものを食べる=むし歯ができる」というイメージが定着していますが、甘いものを食べずとも、お米やパンなどの炭水化物にも糖分が含まれているため、普通に食事をしている限り、むし歯はできる可能性があります。また、むし歯には「穴が開く」というイメージがあり、自分で口の中を見て「穴がないのでむし歯がない」と思い込んでいる人もいますが、むし歯は歯と歯の間や、詰め物などの奥にできている場合も多くあります。そのため、自分で「むし歯にはなりにくい」とか「むし歯はない」と思っている人こそ、むし歯が手遅れになる危険性があるので要注意です。ぜひ、歯に自信がある人も、歯医者さんで定期的な検診を受けることをお勧めします。