インプラント

インプラント治療とは?

インプラント治療とは、虫歯やケガなどで歯を失ったときに、その部分に人工の歯を入れてかみ合わせを回復する治療方法です。ブリッジや入れ歯と違い、あごの骨にチタン製の「人工の根っこ(インプラント)」を埋め込み、その上に人工の歯を固定するのが特徴です。

まず、あごの骨にインプラントを埋める手術を行い、数か月かけて骨としっかり結合するのを待ちます。その後、土台を取り付けて、最後に人工の歯(クラウン)をかぶせて完成します。見た目も自然で、自分の歯のようにしっかりかめるのが大きなメリットです。

ただし、インプラントは手術を伴う治療なので、健康なあごの骨があることや、全身の健康状態が良好であることが必要です。また、治療後も長く使い続けるためには、ていねいな歯みがきや定期的なメンテナンスがとても大切です。

つまり、インプラントは「失った歯を自然に近い形でよみがえらせる治療」ですが、だれでもすぐできるわけではなく、準備やケアがしっかり必要な治療方法です。将来のためにも、まずは歯を失わないように予防が一番大切ですね。

インプラントと天然歯の違い

そもそもどうして歯を失ってしまうのか

日本人が歯を失ってしまう主な理由は、「虫歯」と「歯周病(ししゅうびょう)」の2つです。どちらも口の中の細菌が関係しています。

まず、虫歯は、食べ物の中の糖分をエサにして細菌が酸を出し、その酸が歯を溶かしてしまう病気です。痛みを感じる前に進行してしまうこともあり、放置すると歯の神経が死んでしまい、最終的には歯を抜かなければならなくなることがあります。

一方、歯周病は、歯を支えている骨や歯ぐきが細菌によって壊されていく病気です。初期はほとんど痛みがなく、気づかないうちに進行します。重度になると、歯がグラグラして抜けてしまいます。実は、歯周病は日本人が歯を失う一番の原因といわれており、40代から急に増えていきます。

また、歯の健康に対する意識の低さや、定期的な歯科検診を受けていないことも、日本人が歯を失いやすい理由のひとつです。毎日の歯みがきだけでなく、歯医者さんでのプロのケアもとても大切です。

つまり、虫歯と歯周病はどちらも予防できる病気ですが、放っておくと歯を失う原因になります。若いうちから正しいケアを身につけておくことが、自分の歯を守る第一歩です。

歯を失うことのデメリット

歯を失うことには、見た目やかみ合わせだけでなく、全身の健康にも関わるさまざまなデメリットがあります。まず、目に見えてわかるのが「見た目の変化」です。前歯など目立つ部分を失うと、笑顔に自信が持てなくなったり、人との会話を避けてしまったりすることがあります。また、歯が抜けたままだと、顔全体のバランスが崩れ、老けて見えることもあります。

さらに、「かむ力」が弱くなることも大きな問題です。かたいものや繊維の多い野菜などが食べにくくなるため、食事の内容が偏ってしまい、栄養不足につながることもあります。特に奥歯を失うと、食べ物をしっかりすりつぶせなくなり、胃や腸に負担がかかることもあります。

また、歯を1本失っただけでも、他の歯に影響が出ることがあります。となりの歯が倒れてきたり、かみ合っていた歯が伸びてきたりして、全体の歯並びやかみ合わせが悪くなるのです。その結果、あごの関節に負担がかかり、頭痛や肩こりの原因になることもあります。

つまり、歯を失うことは見た目の問題だけでなく、食事や健康、心の状態にまで影響を与える重大なことなのです。だからこそ、若いうちから歯を大切にし、予防や治療をしっかり受けることがとても大切です。

インプラントのメリットとデメリット

メリット
  • 咀嚼機能を取り戻せる(自分の歯のような自然の噛み心地)
  • セラミックの被せ物にすれば自然な見た目が取り戻せる
  • 入れ歯やブリッジのように他の歯に負担をかけなくて済む
  • 噛んだ際に顎にしっかり刺激を与えるので、顎骨がやせ細らずに済む
  • お手入れがしやすい
デメリット
  • 外科手術が必要になる
  • 自由診療のため費用が高額
  • 1回の手術で完了するわけではないので、治療期間がかかる
  • 基礎疾患(糖尿病や骨粗鬆症等)があるとリスクになる

ブリッジ・入れ歯とインプラントの比較

歯を失ったときの治療には、「ブリッジ」「入れ歯」「インプラント」という3つの選択肢があります。それぞれに特徴やメリット・デメリットがあり、患者さんの年齢や口の状態によって適した方法が異なります。
まずブリッジは、失った歯の両隣の歯を削って土台にし、その上に橋のようにつながった人工の歯をかぶせる治療です。固定式なので安定感があり、見た目も自然ですが、健康な歯を削る必要があるのが大きな欠点です。入れ歯は、取り外しができるタイプで、失った歯の部分に義歯をはめて使います。周囲の歯をほとんど削らずに済むのがメリットですが、違和感があったり、食事や会話に支障が出たりすることがあります。
一方、インプラントは、あごの骨にチタン製の人工歯根を埋め込んで、その上に人工の歯を取りつける方法です。自分の歯のようにしっかりかめて見た目も自然で、他の歯に負担をかけません。ただし手術が必要で、治療期間が長く、費用も高めです。
このように、それぞれの治療法には一長一短があり、自分のライフスタイルや希望に合わせて選ぶことが大切です。どれがよいか迷ったときは、歯科医とよく相談して決めるのが安心です。

インプラント治療を成功させる最も大切なこと

インプラントは、失った歯を人工の歯で補う治療で、見た目も自然でしっかりかめるのが大きなメリットです。でも、インプラントを長く使い続けるためには、治療が終わったあともていねいな「メインテナンス(お手入れ)」がとても大切になります。
インプラントは虫歯にはなりませんが、歯ぐきのまわりに汚れがたまると「インプラント周囲炎(しゅういえん)」という病気になってしまうことがあります。これは、歯周病のように歯ぐきが腫れたり、インプラントを支える骨が少しずつ溶けたりして、最悪の場合インプラントが抜けてしまうこともあります。

インプラント周囲炎とは

インプラント周囲炎(しゅういえん)とは、インプラントを支えている歯ぐきやあごの骨に炎症が起きる病気です。簡単に言うと、インプラント版の歯周病のようなもので、インプラントを入れたあとにきちんとお手入れをしないと発症することがあります。
インプラントそのものは人工物なので虫歯にはなりませんが、そのまわりの歯ぐきや骨は本物です。歯みがきが不十分だと、プラーク(歯垢)や細菌がたまり、まず「インプラント周囲粘膜炎」という歯ぐきだけの炎症が起きます。それを放っておくと炎症が広がり、骨が溶けてしまう「インプラント周囲炎」に進行します。 インプラント周囲炎になると、歯ぐきが腫れたり出血したり、最終的にはインプラントがぐらついて抜けてしまうこともあります。しかも、天然の歯と違って神経がないため、痛みを感じにくく、気づいたときにはかなり進行していることもあります。

この病気を防ぐには、毎日の歯みがきをしっかり行うことが第一です。とくに歯ぐきの境目をていねいにみがくことが重要です。さらに、定期的に歯科医院でクリーニングを受けることで、自分では落としきれない汚れを取り除くことができます。歯科医や歯科衛生士が、インプラントの状態をチェックしてくれるので、問題があっても早く見つけることができます。
つまり、インプラントは「入れたら終わり」ではなく、「入れたあとこそがスタート」と考え、毎日のケアと歯医者での定期検診をしっかり続けることが、インプラントを長持ちさせるカギになります。

引き続き『予防治療』もご覧くださいませ

インプラント治療を受ける歯科医院の選び方

インプラント治療は、あごの骨に人工の歯根を埋めて歯を補う高度な治療です。そのため、治療を受ける歯科医院の選び方はとても重要です。まず注目したいのは、その医院にインプラントの専門的な知識と経験を持つ歯科医師がいるかどうかです。手術をともなう治療なので、しっかりとした技術と実績がある先生のもとで受けるほうが安心です。
次に、カウンセリングが丁寧かどうかも大切です。治療方法や費用、期間、メリット・デメリットなどをしっかり説明してくれる医院は信頼できます。また、無理に治療をすすめるのではなく、患者の希望や不安を聞いてくれる姿勢も重要なポイントです。
さらに、レントゲンやCTなどの検査設備が整っているかも確認したい点です。骨の量や状態を正確に調べることで、安全で適切な治療計画が立てられます。そして、治療後のメインテナンスや定期検診の体制がしっかりしているかどうかも見逃せません。インプラントは治療して終わりではなく、長く健康に使い続けるために、その後のケアがとても大切なのです。
つまり、インプラント治療を受けるなら、「技術・説明・設備・アフターケア」がそろった信頼できる歯科医院を選ぶことが成功のカギになります。

当院のインプラント専門医

岩内 洋太郎 (歯科医師・歯学博士)

経歴

1991年3月  東京都世田谷区生まれ
2009年3月  私立函館ラ・サール高校卒業
2015年3月  昭和大学歯学部卒業
2015年4月  昭和大学歯科病院臨床研修(総合診療歯科)
2016年4月  昭和大学歯学部歯科補綴学講座博士課程入学
2020年3月  昭和大学歯学部歯科補綴学講座博士課程修了
2020年4月~ 同講座助教

所属等
  • 昭和大学歯科補綴学講座
  • 三軒茶屋マルオ歯科クリニック(非常勤)
  • 神田橋デンタルオフィス(非常勤)
  • GOGO歯科クリニック(非常勤)
  • 世田谷区歯科医師会(2種会員)
  • 日本補綴歯科学会
  • 日本口腔インプラント学会
  • 日本デジタル歯科学会
  • ITI(International Team for Implantology)
  • 東京都歯科医師会野球代表チーム
受賞歴
  • 2017年 第8回デジタル歯科学会 最優秀ポスター賞
  • 2018年 FDI2018 106th World Dental Congress The best e-poster award
  • 2019年 第10回日本デジタル歯科学会オーラルスキャナーコンペティション 最優秀賞(3M部門)
  • 2020年 第129回日本補綴歯科学会 課題口演最優秀賞
  • 2021年 第3回ITI Study Club 関東1&2合同支部会 優秀講演賞受賞

インプラント治療が受けられないケース

インプラント治療はとても便利で見た目も自然な方法ですが、すべての人が必ず受けられるわけではありません。体の状態やお口の環境によっては、インプラントが向かない場合もあるのです。
まず大きな理由として、あごの骨が足りない場合があります。インプラントはあごの骨に土台を埋め込む治療なので、骨の量や厚みが十分でないと固定できません。骨が少ない人でも、骨を増やす手術を受ければ可能になる場合もありますが、時間や費用が多くかかります。
また、糖尿病や心臓病などの全身疾患がある人や、喫煙の習慣がある人も注意が必要です。これらの条件があると、手術の傷が治りにくかったり、インプラントが骨としっかり結合しにくくなったりすることがあります。重度の病気がある場合は、安全のために治療を見送ることもあります。
さらに、歯みがきなどのセルフケアが不十分な人も、インプラントには向いていないことがあります。インプラントは虫歯にはなりませんが、まわりの歯ぐきが炎症を起こす「インプラント周囲炎」になると抜けてしまうおそれがあるからです。
つまり、インプラント治療を受けるには、骨の状態や健康状態、生活習慣まで含めて、しっかりと歯科医師と相談し、自分に合った方法を選ぶことが大切です。